『魂をもてなす』
著者 中村 佐知
四六判 並製 216頁
キリスト教の古い伝統に根ざす傾聴のミニストリー
カウンセリング、コーチング、メンタリングとも異なる霊的同伴とは何か。
日々の生活での神の臨在に気づき、人生の旅路に寄り添う働きへの案内書。
「霊的同伴の入門書として最適です」英隆一朗師(イエズス会司祭)推薦
【目次】 はじめに
第一部 霊的同伴を理解する
第1章 霊的同伴とは何か
第2章 霊的同伴を特徴付けるもの
第3章 観想的霊性について
第二部 霊的同伴の働きに整えられる
第4章 霊的同伴者の資質
第5章 霊的同伴と倫理
第6章 霊的同伴者にとっての有益な学び
第三部 霊的同伴の実践
第7章 霊的同伴のセッション
第8章 グループでの霊的同伴
おわりに
謝辞
付録:福音主義霊的同伴者協会の倫理規程
(第1章より)
英語圏では二〇年ほど前から、クリスチャニティ・トゥデイなどのキリスト教雑誌で「スピリチュアル・ディレクション」が話題に上るようになってきました。近年では、ニューヨークタイムスやハフィントンポストなど、一般のメディアでも取り上げられているのを見かけます。
霊的同伴の主要な教科書とも言われるW・A・バリー、W・J・コノリー著『スピリチュアル・ディレクションの実践』の一九八二年初版の前書きによると、イエズス会の司祭である著者は、霊的同伴が当時、カトリックだけでなくプロテスタントの間でも広がり始めていると指摘しています。そして、それがアメリカの霊性における単なる流行であるなら、一〇年も続かないだろうと述べました。この初版から二七年後の二〇〇九年には改訂版が出ました。その前書きには、それが中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポーランド語、ポルトガル語にも翻訳され、またキリスト教以外の信仰者の間でも広がっていると記されています。
ケネス・リーチ(聖公会司祭)は、『魂の同伴者─現代世界におけるキリスト教の霊性』(原書初版一九七七年)の改訂版序文の中で、「一九九四年の今……霊的指導は再び大『流行』となっている」(関訳)と述べています。
本書を準備している今は二〇二一年です。バリーとコノリーが「単なる流行なら一〇年も続かないだろう」と言ったときからすでに四〇年近くが過ぎました。しかしアメリカでは、霊的同伴の働きの広がりは収まる気配がありません。それどころか日本の教会の間でも、しばらく前から少しずつ関心が生まれてきているのが伺われます。
『魂の同伴者』の冒頭で、同書の発行者でもある渋谷聖公会聖ミカエル教会管理牧師の成成鍾司祭が、「今後の日本のキリスト教会においても、霊性や霊的指導は極めて重要な要素と考えられ、関心も高まってくるものと想定されます」と述べています。